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京都地方裁判所 昭和52年(わ)229号 判決

主文

被告人を懲役三年六月に処する。

未決勾留日数中二四〇日を右刑に算入する。

押収してある土石採取許可証原本一通(昭和五二年押第一三七号の一)の偽造部分を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、競輪等の遊興代金に窮し、

第一  別紙一覧表のとおり、昭和四九年一一月二一日ころから昭和五〇年五月三日ころまでの間、前後三九回にわたり、単独で又は中西弘、中江〓、津川久治、中山田健一、藤田曜三、山名秀三のうちの一人若しくは数人と共謀のうえ、京都府亀岡市篠町王子堂山五番地栗山治彌方土蔵ほか三三か所において、甲冑、掛軸、道具類、庭石など九三一点(時価合計二、三六五万八、一〇〇円相当)を窃取した、

第二  津川久治と共謀のうえ、昭和五〇年二月下旬ころ、京都府船井郡八木町字八木小字鹿草一三五番地福嶋吉樹方において、窃盗の目的で所携の金てこ、バール等を使用して、同人方土蔵の扉をこじ開けようとしたが、扉の施錠が破壊できず、その目的を遂げなかつた、

第三  昭和五一年一〇月二六日ころ、京都府亀岡市柏原地内の通称尺谷に同業者清水輝夫を案内し、右尺谷川川原の転石について京都府亀岡土木工営所長から土石採取許可を受ける予定になつている旨虚偽の事実を告げておき、同月二九日午後一一時ころ、京都府船井郡園部町木崎町大川端三〇番地の自宅において、行使の目的をもつて、かねて所持していた昭和四八年一二月一二日付京都府亀岡土木工営所長の記名押印のある同所長発行にかかる被告人宛の土石採取許可証(昭和五二年押第一三七号の一)の出願日、許可年月日、採取場所、採取期間等の各欄に記入されていたそれぞれの数字や文字を安全剃刀の刃を用いて抹消し、翌日の昭和五一年一〇月三〇日午前一〇時ころ、亀岡市内のみどり橋付近にある文房具店において、ボールペンを用いて、右許可証の出願の日付欄に「51・10・3」、許可の日付欄に「51・10・25」、採取場所欄に「九折柏原」、採取期間欄に「51・11・4、51・11・8」等とそれぞれほしいままに記入し、もつて有効期間が経過した右土石採取許可証を利用して新規に右のとおり交付を受けた旨の土石採取許可証一通を偽造し、ついで同所においてその電子コピー複写一通をとり、同日午前一一時ころ、京都府船井郡園部町内林町千原一三番地の三清水輝夫方において、同人に対し、真実許可を得ていないのに恰も右のとおり採取許可を得たかのように装つて、右偽造にかかる土石採取許可証の電子コピー複写一通を交付して行使し、「採石の許可がおりた。ついてはこの許可証を一〇〇万円で買つてほしい。今すぐ金がいるので前金として六〇万くれたら残りは石が届いてからでええわ。」などと虚構の事実を申し向け、同人をしてその旨誤信させ、よつて即時同所において、同人から右土石採取許可証の譲り受け代金の内金名下に現金六〇万円を交付させてこれを騙取した

ものである。

(証拠の標目)(省略)

(累犯前科)

被告人は、(1)昭和四三年一一月二五日大阪高等裁判所で窃盗未遂罪により懲役六月に処せられ、昭和四五年一月一日右刑の執行を受け終り、(2)その後犯した窃盗罪により、昭和四七年三月二二日綾部簡易裁判所で懲役八月に処せられ、昭和四七年一一月一〇日右刑の執行を受け終つたものであつて、右の事実は検察事務官作成の前科調書及び綾部簡易裁判所の判決謄本によりこれを認める。

(法令の適用)

被告人の判示第一の別紙一覧表番号36の所為は刑法二三五条に、その余の判示第一の所為はいずれも同法六〇条、二三五条に、判示第二の所為は同法六〇条、二四三条、二三五条に、判示第三の所為中有印公文書を偽造した点は同法一五五条一項に、偽造有印公文書を行使した点は同法一五八条一項に、詐欺の点は同法二四六条一項にそれぞれ該当するところ、判示第三の有印公文書の偽造とその行使と詐欺との間には順次手段結果の関係があるので、同法五四条一項後段、一〇条により一罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印公文書行使罪の刑で処断することとし、判示第一の別紙一覧表番号34ないし39の罪は前記(1)、(2)の前科との関係で三犯であるから、いずれも同法五九条、五六条一項、五七条により、また判示第一の別紙一覧表番号1ないし33、判示第二、第三の罪はいずれも前記(2)の前科との関係で再犯であるから、いずれも同法五六条一項、五七条によりそれぞれ累犯の加重をし、以上は同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役三年六月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数のうち二四〇日を右の刑に算入することとし、押収してある土石採取許可証原本一通(昭和五二年押第一三七号の一)の偽造部分は判示第三の有印公文書偽造の犯罪行為により生じた物でなんびとの所有も許さないものであるから、同法一九条一項三号、二項によりこれを没収し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

よつて、主文のとおり判決する。

別紙一覧表

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